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松尾法律事務所
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銀行のサラ金化

2016-10-11
 平成18年に貸金業法が改正され,いわゆる総量規制が定められました。改正貸金業法は平成23年に施行されましたが,その結果,消費者破産が激減しました。いかに,サラ金が過剰貸付を行ってきたか,身をもって感じてきました。しかし,近時は,銀行がサラ金化し,元の木阿弥になってきています。大量消費者破産の再来もあるかもしれないと感じるようになってしまっています。
 ちょっと意味が分かりづらいと思うので,具体的に説明します。貸金業法での総量規制というのは,年収の3分の1までしか,貸金業者から借り入れすることができないという制度です。この制度ができるまで,せいぜい年収200万円前後の人でも,普通に500万円近くもサラ金から借金しまくっていまして,大量の破産者を生み出していました。平成10年代半ばまでは,消費者破産の審尋は,集団審尋といって,会議室に何十人も集められ,一度に手続を終わらせるというのが常態化していました。
 ところが,総量規制が施行されると,そのような貸付ができなくなりました。その結果,多額の借金をすることができなくなるので,破産する人が激減したわけです。我々消費者側の弁護士は,昔から過剰貸付の禁止を問題視してきましたが,裁判所は無視し,過剰貸付の禁止という条項が空文化していた状態でした。(一般的な感覚ではどうして金利の高いサラ金でたくさん借りるのか分からないかもしれませんが,生活に困ってほんの数万円を貸してくれと申込みをすると,サラ金は自動的に30万円とか50万円という大金を貸し付けていました。ほんの数万円で良いからと言っても,「どうしてもいらなければ繰上返済すれば良いから」などと言い,無理矢理押しつけるわけです。)しかし,総量規制によって,過剰貸付自体ができなくなりました。これで,破産する人の数は激減しましたし,破産する人でも,借金の総額自体が小さくなっていきました。
 ところが,最近,また情勢が変わってきました。債務整理の相談に来る方の借金総額が収入に比して大きくなり,破産せざるを得ないような状況が増えて行っているのです。総量規制が廃止されたわけではないのに,どうしてそのようなことが起こったかと言えば,これまでサラ金しか見向きもしなかった低所得の消費者に対して,銀行が積極的に貸し付けをしはじめたからです。(銀行は銀行業法等によって規制されており,サラ金などのように貸金業法の規制対象ではありません。)どうして銀行がそのようなことをするかといえば,①マイナス金利政策を始め銀行の収益態勢が落ちていることと,②単純な銀行のサラ金化があるのではないかと思います。
 銀行のサラ金化については,手口としては,親会社の銀行が貸し付け,子会社のサラ金が保証人となって,消費者に貸し付けをするという手段をとります。銀行は貸金業者ではないので,年収の3分の1が上限という総量規制の対象外ですので,いくらでも貸し付けできます。しかし,いざ顧客が支払えなくなると,すぐに保証人である子会社のサラ金が支払をし,サラ金から顧客に支払を求めます。要するに,銀行を隠れ蓑にしてサラ金が貸し付けをしているだけです。このような手法は,レイクを中心に,総量規制施行当初から危惧されていました。そして実際にレイクがそのような営業手法をはじめ,プロミスなどが追随するところとなりました。その結果,また,多額の借金を抱える破産者が増えて行っているのです。
 正直なところ,レイクについてはそんなやり方をするのは当然に予想できました。しかし,プロミスについては,三大メガバンクのひとつである三井住友銀行がそのようなことをやるわけですから,メガバンクのプライドとして子会社とはいえサラ金とは一線を画すのではないかという淡い期待を持っていました。ところがふたを開けてみると,そんなことはありません。儲かるのであれば,大量の破産者を出すことになろうとも,消費者を食い物にすることになろうとも,儲かる方法をとってきたわけです。
 総量規制がザル法であったことがはっきりとしてきましたし,企業に,法律にない消費者保護を期待しても無意味だということもよく分かりました。
 ところで,近時は,消費者被害の加害者は,このことをよく知っています。詐欺の加害者は,被害者にお金がなければ,昔は,サラ金に行かせて借金をさせていましたが,現在は,銀行に行かせて借金させます。プロミスの自動契約機で契約する際も,三井住友銀行で借りるのか,プロミスで借りるのか選ぶことができるようになっているらしいですが,詐欺の加害者は,三井住友銀行で借りるように念入りに指示をするらしいです。プロミスで借りれば年収の3分の1しか借りられないけど,三井住友銀行で借りれば年収の3分の1を超えて,いくらでも借りることができますからね。
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